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燗とは?わずか5℃で香りが変わる日本酒の温め方と6つの温度帯を解説

2026 7/21
飲み方・楽しみ方
2026年7月21日
燗とは?わずか5℃で香りが変わる日本酒の温め方と6つの温度帯を解説のアイキャッチ画像

「燗とは、どのくらいの温度で温めた日本酒のことなの?」——居酒屋のメニューで「熱燗」「ぬる燗」といった言葉を見かけて、その違いが気になったことはありませんか。同じ一本の日本酒でも、温める温度が5℃違うだけで香りの立ち方も甘辛の感じ方もがらりと変わります。ここを知っているかどうかで、家飲みの満足度は大きく変わってきます。

結論からお伝えすると、燗とは「温めて飲む日本酒」の総称で、温度によって30℃前後の日向燗から55〜60℃の飛び切り燗まで、6つの呼び名で細かく分けられています。そしてお燗づけの基本は電子レンジではなく湯煎。ちょっとしたコツを押さえれば、家庭でも狙った温度にきれいに仕上げられます。

この記事では、燗の意味と温度帯ごとの表情の違い、失敗しないお燗のつけ方、燗に向く酒・向かない酒の見分け方までまとめて解説します。読み終える頃には、その日の料理や気分に合わせて温度を選べるようになっているはずです。

📌 この記事でわかること

・燗とは何か、冷酒や常温との違い
・30℃〜60℃まで6つの温度帯で変わる香りと味
・湯煎・電子レンジでのお燗の正しいつけ方
・燗にして美味しくなる酒、向かない酒の見分け方

目次

燗とは?温めて飲む日本酒の呼び名と基礎知識

燗とは?温めて飲む日本酒の呼び名と基礎知識の解説画像

まずは「燗」という言葉の意味と、なぜ日本酒をわざわざ温めて飲むのかという基本から整理していきましょう。ここを押さえておくと、あとの温度帯の話がすっと頭に入ってきます。

燗とは温めて飲む日本酒のこと

燗とは、日本酒を人肌以上の温度に温めて飲むこと、またその温めたお酒そのものを指す言葉です。「お燗」「燗酒(かんざけ)」とも呼ばれ、居酒屋でおなじみの「熱燗」も燗の一種にすぎません。日本では平安時代の頃から酒を温めて飲む文化があったとされ、冬場に体を内側から温める飲み方として長く親しまれてきました。温める理由は、日本酒が米由来の旨味や酸を豊かに含み、温度を上げるとそれらがふくらんで感じられるためです。冷やすとシャープに、温めると丸くまろやかに——同じ一本でこの二面性を楽しめるのが、ワインやビールにはない日本酒ならではの魅力です。まずは「燗=温めた日本酒」とざっくり覚えておけば十分です。

なぜ日本酒は温めると美味しく感じるのか

結論として、温度が上がると香りの分子が揮発しやすくなり、甘味や旨味の感じ方も強まるからです。人間の舌は温かいものほど甘味や旨味を感じやすく、逆に冷たいと苦味や酸味の角が立ちやすい性質があります。日本酒を温めると、米の甘みやコクがふわっと前に出て、キリッとした酸や渋みが後ろに下がる。この味のバランスの変化こそ、お燗の醍醐味です。実際に同じ純米酒を冷やと燗で飲み比べてみると、燗のほうが口当たりが柔らかく、料理と一緒でも飲み飽きしにくいと感じる方が多いはずです。ただし温めればどんな酒でも美味しくなるわけではなく、酒質との相性があります。この見分け方は後半で詳しく解説します。

冷酒・常温(冷や)との違いを整理

日本酒は温度帯で大きく「冷酒」「常温」「燗」の3つに分けられます。冷酒はおよそ5〜15℃に冷やしたもので、フルーティーな吟醸香やシャープなキレを楽しむ飲み方。常温は20℃前後で、「冷や(ひや)」とも呼ばれ、酒本来のバランスを素直に味わえます。そして燗が30℃以上に温めたもの、というのが基本の区分けです。ここで注意したいのが「冷や」という言葉。現代では「冷えたお酒」と誤解されがちですが、本来は冷蔵設備がなかった時代に「燗をつけない常温の酒」を指した言葉で、燗の対義語にあたります。お店で「冷やで」と頼むと常温で出てくることがあるのはこのためです。豆知識として覚えておくと通っぽく振る舞えます。

日本酒の種類そのものをおさらいしたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

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30℃から60℃まで、5℃刻みで変わる6つの温度帯

燗の面白さは、5℃刻みで細やかに呼び名が分かれているところにあります。それぞれの温度でお酒の表情はこんなに変わります。まずは早見表で全体像をつかんでから、一つずつ見ていきましょう。

呼び名 温度の目安 香り・味の傾向
日向燗(ひなたかん) 30℃前後 ほんのり温か。香りが優しく開き始める
人肌燗(ひとはだかん) 35℃前後 米や麹の香りがふくらむ。甘みが顔を出す
ぬる燗(ぬるかん) 40℃前後 旨味と甘みが最も豊かに。燗の主役
上燗(じょうかん) 45℃前後 香りが引き締まり、キレが出てくる
熱燗(あつかん) 50℃前後 シャープで辛口に。後味すっきり
飛び切り燗(とびきりかん) 55〜60℃前後 キレ最大。香りは飛びやすい

※温度帯と呼び名は月桂冠・地酒蔵元会など各社公表値をもとに日本酒の教科書が整理。

日向燗(30℃)と人肌燗(35℃)は香りを開く入り口

まず温めの入り口が日向燗と人肌燗です。日向燗は30℃前後、日なたに置いた酒くらいのほんのりした温かさで、冷たさが消えて香りが優しく立ち上がり始めます。人肌燗は35℃前後、手のひらで触れて人肌と同じくらいの温度帯。米や麹由来のふくよかな香りが開き、隠れていた甘みがそっと顔を出してきます。この2つは「温めた」という感覚が強すぎず、日本酒本来の繊細な風味を残したまま味わえるのが特徴です。吟醸系のように香りが命のお酒を軽く温めたいときや、燗はまだ苦手という方が最初に試すのにも向いています。見分け方は簡単で、徳利を持ったときに「冷たくないな」程度が日向燗、「じんわり温かい」が人肌燗の目安です。

ぬる燗(40℃)は旨味が最もふくらむ燗の主役

燗の中で最も人気が高く「まず試すならここ」といえるのが40℃前後のぬる燗です。この温度になると米の甘みや旨味が最大限にふくらみ、酸の角が取れて口当たりがまろやかになります。純米酒や生酛系のように旨味の乗ったお酒ほど、ぬる燗にすることで持ち味がぐっと前に出てきます。見分け方は、徳利の下のほうを触ってじんわり温かく、湯気は立たないくらい。口に含むと甘みがふわっと広がり、後味は柔らかく切れていきます。注意点として、ぬる燗の美味しさは飲み進めるうちに温度が下がっても大きくは損なわれないので、慌てて飲み切る必要はありません。むしろ冷めていく過程の味の変化も楽しめる、懐の深い温度帯です。

上燗(45℃)・熱燗(50℃)はキレを楽しむ温度帯

しっかり温かさを感じたいなら、上燗と熱燗の出番です。上燗は45℃前後で、注いだときに湯気がふわりと立ち、香りが引き締まってキレが出てきます。熱燗は50℃前後、口をつけると「熱い」と感じる温度で、味わいがシャープになり後味がすっきり切れるのが持ち味です。辛口の本醸造酒や普通酒を熱燗にすると、料理の脂を流してくれる爽快な飲み口になります。徳利の底を触ってやや熱いと感じるくらいが45〜50℃の目安です。ただし温めすぎると香りが飛んでアルコールの刺激ばかりが立ってしまうため、熱すぎるのが苦手な方は上燗くらいで止めておくと飲みやすく仕上がります。冬の鍋や揚げ物と合わせると相性の良さを実感できるはずです。

飛び切り燗(55〜60℃)は上級者向けの熱さ

燗の中で最も高温なのが、55〜60℃の飛び切り燗です。徳利の口からしっかり湯気が上がり、キレの鋭さは全温度帯の中で最大級。冷えた体を一気に温めたい真冬や、味の濃いお酒をあえて引き締めたいときに選ばれます。一方で、これだけ高温になると繊細な香りは飛んでしまい、アルコール感も強く出やすくなります。そのため飛び切り燗が生きるのは、もともと味わいがしっかりした燗向きの普通酒や本醸造酒などに限られます。見分け方としては、徳利を持つと熱くて長く握れないくらいが目安。豆知識として、熱くしすぎた燗はいったん冷ましてからのほうが飲みやすくなることもあり、これがのちほど紹介する「燗冷まし」の楽しみにつながっていきます。

お燗のつけ方は湯煎が基本|失敗しない手順

お燗のつけ方は湯煎が基本|失敗しない手順の解説画像

温度帯がわかったら、次はいよいよ実践です。家庭でお燗をつける方法は主に湯煎と電子レンジの2つ。それぞれのコツと、やりがちな失敗を押さえておきましょう。

湯煎なら温度ムラなく柔らかく仕上がる

もっともおすすめなのが、お湯で徳利ごと温める湯煎です。じんわり均一に熱が回るため、味が角立たず柔らかく仕上がります。手順はシンプルなので、下のステップ通りに進めれば失敗しません。

♨️ 湯煎でのお燗のつけ方
Step1:徳利に日本酒を8分目まで注ぐ(注ぎすぎは温度ムラの原因に)
↓
Step2:鍋に湯を沸かし、沸騰したら火を止める
↓
Step3:徳利を肩まで浸ける。熱燗は約3分、ぬる燗は約2分半が目安
↓
Step4:徳利の底を触って温度を確認(やや熱いで45〜50℃)
↓
完成! 温めすぎると香りが飛ぶので、少しぬるいと感じるくらいで引き上げるのがコツ

徳利の8分目までにするのは、注ぎ口まで満たすと熱の対流が起きにくく、上下で温度差が出てしまうためです。より正確に狙うなら、料理用の温度計を1本用意しておくと安心です。

電子レンジは時短向き|揺らして均一化するのがコツ

忙しいときに手軽なのが電子レンジです。1合(180ml)の徳利なら、500Wで約60秒が熱燗、約50秒がぬる燗の目安。ただしレンジは一気に温度が上がるうえ、徳利の上下で熱ムラができやすいのが弱点です。そこで20秒ごとに一度取り出し、徳利を軽く揺らして温度を均一にするとムラが抑えられます。加熱するときは必ずキャップや蓋を外し、酒量は肩口までにとどめておきましょう。密閉状態や入れすぎは吹きこぼれや突沸の原因になります。手軽さは湯煎に勝りますが、味の柔らかさでは湯煎に一歩譲るというのが正直なところ。まずはレンジで気軽に始めて、燗の楽しさがわかってきたら湯煎に挑戦する、という順番がおすすめです。

失敗①温めすぎで香りが飛んでしまう

お燗で最も多い失敗が、温めすぎです。「熱いほうが燗らしい」と長く加熱してしまい、香りが飛んでアルコールの刺激ばかりが立つ——これは初心者がやりがちなパターンです。原因は、加熱を止めても徳利の中では余熱で温度が上がり続けるため。目標温度の少し手前で引き上げるのが正解です。対策として、狙いより2〜3℃低いところで火から外し、そのまま少し置いて仕上げると失敗しにくくなります。特に香りを大切にしたい純米吟醸系は、日向燗〜ぬる燗までにとどめるのが無難です。もし温めすぎてしまっても、慌てずに少し冷ませば飲みやすい温度に落ち着きます。「燗は引き算」——ぬるいと感じるくらいがちょうどいい、と覚えておきましょう。

⚠️ 注意:加熱のしすぎに気をつけて

電子レンジで加熱しすぎると、突沸(急激な沸騰)で酒が飛び散り危険です。短めの時間から様子を見て、加熱後は少し置いてから取り出しましょう。なお、20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。

燗にして化ける酒、向かない酒の見分け方

「温めればどれも美味しくなる」わけではないのがお燗の奥深いところ。ここでは、燗にすると持ち味が開く酒と、冷やして飲みたい酒の見分け方を解説します。

純米酒・本醸造酒は燗の王道

燗に向く酒の代表格が、純米酒と本醸造酒です。純米酒は米・米麹・水だけで造られ、米の旨味や酸がしっかり乗っているため、温めると甘みとコクがふくらんで真価を発揮します。本醸造酒は少量の醸造アルコールを加えたすっきり系で、熱燗にするとキレが際立ち、食事に寄り添う爽快な飲み口になります。見分け方はラベルの特定名称表示。「純米酒」「本醸造酒」と書かれていれば、まず燗で試して間違いありません。温度は純米酒ならぬる燗〜上燗、本醸造酒なら上燗〜熱燗が狙い目です。米の旨味を活かす飲み方なので、旨味とは何かを深掘りしたい方は純米酒の解説記事も参考にしてみてください。

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生酛・山廃はぬる燗で本領を発揮する

燗を語るうえで外せないのが、生酛(きもと)・山廃(やまはい)造りのお酒です。これらは昔ながらの手間のかかる製法で乳酸をじっくり育てるため、複雑な旨味と力強い酸を備えているのが特徴。冷やだと酸や独特の香りが少し硬く感じられることもありますが、ぬる燗〜熱燗に温めると酸の角が取れ、旨味がぐっと前に出て一体感のある味わいに化けます。「燗上がりする酒」の典型がこのタイプです。見分け方はラベルの「生酛」「山廃」「山廃仕込み」といった表記。日本酒の楽しみ方に慣れてきたら、ぜひ生酛系を温度違いで飲み比べてみてください。同じ一本が温度で表情を変える面白さを、いちばん実感できるお酒です。

大吟醸・生酒は基本は冷やして楽しむ

逆に、燗にはあまり向かないお酒もあります。代表が大吟醸などの吟醸系と、火入れをしていない生酒です。大吟醸は華やかでフルーティーな吟醸香が命ですが、温めるとその繊細な香りが飛んでしまい、持ち味を損なうことがあります。生酒はフレッシュさが魅力で、加熱するとせっかくの生き生きした風味が変質しやすいお酒です。これらは基本的に冷酒〜常温で楽しむのがおすすめ。ただし「絶対に温めてはいけない」というルールがあるわけではなく、軽く人肌燗にして表情の変化を試す上級者もいます。まずは冷やで本来の味を知ってから、という順番が安心です。生酒の特徴や保存のコツは、こちらの記事で詳しく解説しています。

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🍶 燗の向き・不向き早わかり
純米酒◎ ぬる燗〜上燗で旨味が開く
本醸造酒◎ 上燗〜熱燗でキレよく
生酛・山廃◎ ぬる燗〜熱燗で燗上がり
大吟醸・吟醸△ 冷やが基本(香りが飛びやすい)
生酒△ 冷やが基本(風味が変わりやすい)

燗上がり・燗冷まし…お燗の言葉と楽しみ方

お燗の世界には、知っていると一段深く楽しめる言葉があります。ここでは「燗上がり」「燗冷まし」といったキーワードと、道具による楽しみ方の広がりを紹介します。

燗上がりとは温めて味が良くなること

「燗上がり(かんあがり)」とは、温めることで冷やのときより味わいが良くなるお酒のことを指す言葉です。酒屋や蔵元が「この酒は燗上がりする」と言えば、それは温めてこそ真価を発揮する燗向きの一本だという最上級の褒め言葉。温めると旨味と甘みがふくらみ、酸がまろやかにまとまって、全体のバランスが整うお酒がこれにあたります。前述の純米酒や生酛・山廃タイプに多く見られる現象です。見分けるコツは、まず常温で一口味わい、次にぬる燗にして飲み比べること。温めたほうが「美味しい」「まとまった」と感じれば、それは立派な燗上がりする酒です。逆に温めて平板になるようなら、その酒は冷やで楽しむのが向いている、という判断材料にもなります。

燗冷ましも実は美味しい|逆張りの楽しみ方

意外と知られていないのが、温めた酒がゆっくり冷めていく「燗冷まし(かんざまし)」の美味しさです。一般には「冷めた燗はもう美味しくない」と思われがちですが、実は温度が下がる過程でこそ、旨味と酸がほどよくなじんで角の取れた独特の丸みが生まれることがあります。特に生酛・山廃のような味の濃いお酒は、熱燗からぬる燗、常温へと下がっていく間に何段階も表情を変え、その移ろいそのものが楽しみになります。だからこそ、燗を「熱いうちに飲み切らなきゃ」と焦る必要はありません。あえて少し置いて、冷めていく味の変化を追いかけてみる。これは温度で遊べる日本酒ならではの、通好みの楽しみ方です。一本の酒を長く味わい尽くせる、コスパの良い飲み方ともいえます。

ちろりや酒燗器で燗の世界はもっと広がる

お燗をもっと楽しみたくなったら、道具にこだわってみるのもおすすめです。徳利での湯煎に加えて、「ちろり」という取っ手付きの金属製容器を使うと、熱伝導が良く短時間で狙った温度に仕上がります。錫(すず)製のちろりは口当たりをまろやかにするといわれ、燗好きに長く愛用されてきました。さらに温度管理を突き詰めたい方には、設定した温度をキープできる家庭用の酒燗器も市販されています。とはいえ、最初から道具をそろえる必要はありません。まずは家にある徳利と鍋で湯煎から始め、燗が習慣になってきた頃に器を一つ迎える——それくらいの気軽さで十分です。器が変わると同じ酒でも印象が変わるのも、お燗の奥深い楽しみの一つです。

やりがちなお燗の失敗と、シーン別の合わせ方

最後に、家でお燗を始めるとつまずきやすいポイントと、料理やシーンに合わせた温度の選び方を紹介します。ここを押さえれば、日常の食卓でお燗をぐっと使いこなせるようになります。

🗓 燗酒がおいしく感じる季節の目安
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
◎ ◎ ○ △ △ △ △ △ ○ ○ ◎ ◎

◎=燗が恋しくなる寒い時期 ○=過ごしやすい端境期 △=冷酒が人気の暖かい時期(あくまで需要の目安。夏に燗を楽しんでも問題ありません)

失敗②レンジで温度ムラ・吹きこぼれ

電子レンジで起こりがちなのが、温度ムラと吹きこぼれです。徳利の下は冷たいのに上だけ熱い、あるいは加熱しすぎて酒が噴き出してしまう——これはレンジ特有の急加熱が原因です。マイクロ波は液体を局所的に一気に温めるため、放置すると上下で大きな温度差が生まれます。対策は前述の通り、20秒ごとに取り出して徳利を揺らし、熱を全体に回すこと。そして酒量を肩口までにとどめ、キャップは必ず外すこと。この一手間で、ムラも吹きこぼれもぐっと減らせます。もし「レンジだとどうも味が決まらない」と感じるなら、思い切って湯煎に切り替えるのが確実です。少し時間はかかりますが、仕上がりの柔らかさは湯煎に軍配が上がります。失敗が続くときこそ、基本の湯煎に立ち返ってみてください。

温度と料理のペアリングを楽しむ

お燗の醍醐味は、温度を料理に合わせて選べることです。目安として、ぬる燗(40℃)は旨味がふくらむので、煮物やおでん、焼き魚といった出汁のきいた和食と好相性。熱燗(50℃)はキレが立つため、天ぷらや唐揚げなど脂の多い料理の後味をすっきり流してくれます。人肌燗(35℃)のように控えめな温度は、刺身や冷菜など繊細な料理を邪魔しません。料理を邪魔せず食事に寄り添う「食中酒」という考え方は、まさにお燗と相性の良いテーマです。その日の献立に合わせて温度を1段変えるだけで、同じ酒が違う顔を見せてくれます。食事に合わせる日本酒選びをもっと知りたい方は、こちらもどうぞ。

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シーン別・お燗の温度の選び方

シーンによっても、選びたい温度は変わります。一人でゆっくり晩酌するなら、味の変化を長く楽しめるぬる燗がおすすめ。冷めても美味しいので、慌てずマイペースに飲めます。来客やちょっとした集まりには、湯気が立って見た目にも温かい上燗〜熱燗が場を和ませてくれます。真冬に鍋を囲むなら、体の芯まで温まる熱燗〜飛び切り燗が気分。逆に、香りを大切にしたい特別な一本を開けるときは、人肌燗までにとどめて繊細さを残すのが正解です。このように「誰と・何を食べながら・どんな気分で」飲むかで温度を選べるのが、燗の自由さであり面白さ。正解は一つではないので、いろいろな温度を試して自分の好みを見つけていくのが、お燗上達のいちばんの近道です。

燗にまつわるよくある3つの疑問

最後に、お燗を始める方から寄せられやすい疑問をQ&A形式でまとめました。ちょっとしたモヤモヤを解消して、気持ちよくお燗デビューしましょう。

「熱燗」と「お燗」は同じ意味なの?

結論からいうと、両者はイコールではありません。「お燗」は温めた日本酒全体を指す総称で、その中に日向燗・人肌燗・ぬる燗・上燗・熱燗・飛び切り燗という6つの温度帯が含まれます。つまり熱燗は50℃前後という特定の温度帯を指す、お燗の一種にすぎません。居酒屋で「熱燗ください」と頼むと文字通り熱めに温めた酒が出てきますが、本来はもっと幅広い温度で楽しめるのが燗の世界です。「ぬる燗で」と温度を指定して頼めるようになると、ぐっと通っぽく、自分好みの一杯に近づけます。まずは総称としての「お燗」と、その中の一段階である「熱燗」を区別して覚えておきましょう。

Q. どんな日本酒でも燗にしていいの?
A. 法律や決まりで禁じられているわけではなく、どんな日本酒も温めて飲めます。ただし美味しくなるかは別問題です。米の旨味が乗った純米酒・本醸造酒・生酛・山廃は燗上がりしやすく、逆に華やかな大吟醸や生酒は香りやフレッシュさが飛びやすいため冷やが基本。迷ったら、まず常温で一口、次にぬる燗で一口、と飲み比べて好みで判断するのがいちばんです。

一度温めた燗酒は温め直せる?保存できる?

基本的には、その日に飲む分だけを温めるのがおすすめです。日本酒は加熱と冷却を繰り返すと風味が変わりやすく、温め直した酒は本来の香りや味が損なわれがち。少し多めに温めてしまった場合は、無理に飲み切らず「燗冷まし」として冷めていく味の変化を楽しむほうが、むしろお得な楽しみ方になります。開栓後のボトル自体は冷蔵庫で保存し、飲むたびに必要な分だけ徳利に移して温めるのが、風味を守るコツ。特に生酒は温度変化に弱いので、開栓後は早めに飲み切るようにしましょう。詳しい保存の考え方は、日本酒の種類ごとに少しずつ異なります。

まとめ:燗とは温度で表情を変える日本酒の楽しみ方

🍶 この記事の結論

燗とは温めて飲む日本酒のことで、30〜60℃を6段階に分けて楽しみます。まずは純米酒を40℃前後のぬる燗で試すのが失敗しない第一歩です。

✅ 要点チェック
  • ✔ 温度で選ぶ:30℃日向燗〜60℃飛び切り燗の6段階
  • ✔ 迷ったらぬる燗:40℃前後は旨味が最も開く
  • ✔ つけ方は湯煎:8分目・沸騰後に火を止める
  • ✔ 酒質で見分ける:純米・本醸造・生酛が燗向き
  • ✔ 温めすぎ注意:ぬるいくらいで引き上げる

燗の魅力は、たった5℃の違いで同じ一本がまったく違う表情を見せてくれるところにあります。難しく考えず、まずは冷蔵庫や棚にある純米酒を徳利に8分目まで注ぎ、火を止めた鍋の湯に3分ほど浸けてぬる燗を作ってみてください。冷やで飲むときとの味の違いに、きっと驚くはずです。そこから温度を少しずつ変えて、自分好みの一杯を探す旅を楽しんでいきましょう。

※本記事の温度や呼び名の目安は各酒造メーカーの公表値を参考にしています。なお、20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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日本酒の教科書編集部です。日本酒の基礎知識・銘柄情報・飲み方を、酒蔵公式情報や公的情報、販売店情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、仕様変更や流通状況の変化があれば更新します。

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