お酒売り場で「ROKUJI」「SHICHIJI」と数字の名前が並んだ丸いラベルの日本酒を見かけて、これは何だろうと足を止めた方は少なくないはずです。純米でも吟醸でもない、時刻がそのまま銘柄名になっている——それが「ひねもす(HINEMOS)」という日本酒です。
結論から言うと、ひねもすは夜6時から朝5時までの12の時刻を、そのまま12銘柄に置き換えた日本酒シリーズです。アルコール度数は3%から16%まで幅があり、赤い色の酒も、泡の立つ酒も、甘酒のような酒もあります。「今夜はどれを飲もう」ではなく「今が何時か」で選ぶ。日本酒の選び方をまるごと入れ替えた、めずらしい設計のブランドです。
この記事では、12銘柄すべてを公式サイトの公表値(価格・アルコール度数・内容量)でひとつずつ整理し、時間帯ごとの味の違い、買える場所、そして買う前に知っておきたい保存の注意点まで通しで説明します。読み終えるころには、自分の生活時間に合う1本が決まっているはずです。
・ひねもす(HINEMOS)は夜6時〜朝5時の時刻名を冠した12銘柄のシリーズ
・造り手は神奈川県小田原市の森山酒造。冷蔵倉庫の中で1年じゅう仕込む蔵
・全銘柄が500ml。価格は2,970円から7,590円、度数は3%から16%まで
・全銘柄が要冷蔵。低アルコールの銘柄は常温放置すると吹き出すことがある
ひねもすの日本酒とは?「一日じゅう」の名を持つ12銘柄

「ひねもす」は一日じゅうを意味する古いことば
ひねもすは漢字で「終日」と書き、朝から晩まで、一日じゅうという意味の古語です。与謝蕪村の「春の海 終日(ひねもす)のたりのたりかな」という句で覚えている方も多いでしょう。うららかな春の日、海が一日じゅうゆるやかにうねっている——あの、時間がゆっくり流れる感じを表すことばです。
ブランドの公式サイトも、この語の意味をそのまま設計思想にしています。掲げられているコンセプトは「時間に寄り添う日本酒」。うれしい時間にも、しんどい時間にも、その時間のそばに酒がある、という考え方です。だから銘柄名が時刻になっている。ROKUJI(PM6:00)からGOJI(AM5:00)まで、12の時刻がそのまま12本の名前です。
見分け方は簡単で、ラベルが時計の文字盤のような円形になっており、AM/PMの表記が入っています。これは海外の人が手に取ったときにも意味が伝わるようにという配慮で、実際に直営店では英語対応のスタッフが立つ日もあります。
ひとつ知っておくと得なのは、この名前が「その時刻にしか飲めない」という制約ではないということです。昼にGOJIを飲んでも、休日の午後にSANJIを開けても、何も間違っていません。時刻はあくまで「こういう気分のときに合う」という道しるべとして付けられています。
吟醸でも純米でもなく「飲む時間」で分ける
ひねもす最大の特徴は、日本酒の分類を特定名称でおこなっていない点にあります。ふつう日本酒の棚は「純米大吟醸」「本醸造」といった精米歩合と原料による区分で並びますが、ひねもすは12本すべてを時刻で並べています。
なぜそうしたのか。特定名称は造り方の分類であって、飲み手が知りたい「どんな味か」「いつ飲むと合うか」を直接には教えてくれないからです。純米大吟醸と書かれていても、それが食前に向くのか食後に向くのかは書かれていません。時刻で分ければ、夕食の乾杯なら6時、寝る前の一杯なら1時、と生活の側から選べます。
実際の並びを見ると設計の意図がはっきりします。夕方から夜にかけては泡の立つ軽い酒と食事に合う酒、深夜に向かうにつれて度数が上がり味が濃くなり、夜明けに近づくとまた度数が下がって甘く軽くなる。一日の体調と気分の曲線に、酒のほうを合わせてあるのです。
注意しておきたいのは、この分類が特定名称の代わりになるわけではないことです。KUJIやJUICHIJIのように純米大吟醸に当たる銘柄もあり、そこは公式サイトの各商品ページに明記されています。時刻はあくまで入口で、中身は従来の日本酒の造りの上に立っています。
造るのは小田原の森山酒造、冷蔵倉庫の中にある酒蔵
ひねもすを醸しているのは、神奈川県小田原市の森山酒造です。ブランドを運営するのは株式会社RiceWineで、酒そのものは創業から300年以上を数えるこの蔵の12代目・湯浅俊作氏が造っています。新しいブランドですが、造りの背骨には長い歴史を持つ蔵が入っている、という構図です。
この蔵が変わっているのは立地です。森山酒造はもともと愛知県北設楽郡にありましたが、2021年7月に小田原へ移転しました。しかも移転先の蔵は冷蔵倉庫の中にあります。倉庫まるごとを低温に保ち、その内部に仕込み設備を置いているのです。
なぜそうするのかというと、日本酒造りは温度管理がすべてに近いからです。伝統的な「寒仕込み」は、冬の冷え込みを利用して雑菌の繁殖を抑え、もろみをゆっくり発酵させる方法です。裏を返せば、冬にしか仕込めない。倉庫ごと冷やしてしまえば季節に関係なく低温を保てるので、1年を通して仕込む「四季醸造」ができます。
見分け方として覚えておくと面白いのは、ひねもすに「新酒」「ひやおろし」といった季節表示の銘柄がほとんど見当たらないことです。季節ごとの限定酒でシリーズを組む蔵とは考え方が違い、12銘柄を通年で安定して供給する設計になっています。詳しい蔵の情報はHINEMOS公式サイトのABOUTページで公開されています。
全銘柄が500ml、この中途半端なサイズが選ばれた理由
ひねもすのボトルは12銘柄すべてが500mlです。日本酒の標準サイズである四合瓶(720ml)でも一升瓶(1,800ml)でもない、独自の容量を採用しています。
理由は公式サイトが明記しているとおり、単身世帯を想定したためです。720mlは一合(180ml)にして4杯分。ひとりで飲みきるには数日かかり、その間に香りが落ちます。500mlなら2〜3回で飲みきれる量で、開栓から1か月以内という推奨期間にも余裕を持って収まります。
実際に冷蔵庫に入れてみると差がわかります。四合瓶は背が高くドアポケットに入らないことがありますが、500mlのひねもすは扉側の棚に立てて収まる高さです。全銘柄が要冷蔵のシリーズなので、この「冷蔵庫に入る」ことは思っている以上に効いてきます。
豆知識として、直営店ではさらに小さい170mlのミニボトルが1本から買えます。12銘柄すべてを試すのに500mlを12本買うのは現実的ではないので、まず小容量で当たりをつけて、気に入った銘柄だけ500mlで買い足す——これが遠回りに見えていちばん失敗の少ない買い方です。
夜6時から9時まで|食卓と一緒に開ける4銘柄
ROKUJI(PM6:00)|甘さを削ぎ落とした辛口スパークリング
一日の締めくくりの最初の一杯に置かれているのがROKUJIです。500mlで3,740円(税込)、アルコール度数は11%、タイプは辛口のスパークリングです。
香りはマスカット、ライム、そしてハーブ。口に含むと細かい泡が立ち上がり、はっきりした酸が口の中をリセットしていきます。甘さを抑えてあるので、乾杯のあとそのまま料理に入っていける組み立てです。スパークリングの日本酒というと甘口の印象を持つ方が多いのですが、ROKUJIは真逆で、白ワインのブリュットに近い立ち位置と考えるとわかりやすいでしょう。
飲むときのコツは、開ける前に冷蔵庫でしっかり冷やしておくことです。泡のある酒は温度が上がると開栓時に噴きやすくなります。栓を開けたら、細長いグラスに注いで泡の立ち上がりを見ながら飲むと、香りの立ち方が変わるのがわかります。
注意点として、ROKUJIは冷蔵保存が前提で、開栓後は約1か月以内に飲みきるのが公式の推奨です。泡の酒は開けた瞬間から炭酸が抜け始めるので、実際には数日で飲みきったほうがおいしさは保てます。
SHICHIJI(PM7:00)|度数5%、瓶の中で泡を育てた甘口
ROKUJIの次に置かれるSHICHIJIは、500mlで3,300円(税込)、アルコール度数は5%です。ビールより低い度数で、甘口に振ってあります。
この銘柄が面白いのは造り方です。炭酸ガスを後から吹き込むのではなく、シャンパーニュと同じく瓶の中で発酵させ、そこで生まれた炭酸を瓶に閉じ込めています。だから泡がきめ細かく、しかも時間が経ってもだれにくい。香りは甘酸っぱいフルーツを思わせ、口に含むとやさしい甘みと旨味が広がり、炭酸が後口を軽く切っていきます。
公式が挙げている合わせ方は、シャンパングラスに注ぐか、氷を入れてロックにするか。料理はフライドポテト、ブルスケッタ、生ハム、シーザーサラダ、タコス、ピザと、塩気と食感のある洋風のつまみが並びます。日本酒=和食という発想を外してくる銘柄です。
気をつけたいのは、度数5%という数字に引っ張られて常温で置いてしまうことです。SHICHIJIは瓶内に酵母が生きているタイプなので、常温に長く置くと開栓時に吹き出すおそれがあります。買ったらまず冷蔵庫、が鉄則です。
HACHIJI(PM8:00)|炊きたてのご飯を思わせる甘口
HACHIJIは500mlで2,970円(税込)、アルコール度数10%の甘口です。12銘柄のなかでGOJIと並ぶ最も手に取りやすい価格帯にあります。
香りは炊いたお米、酒粕、そしてフレッシュチーズ。口に含むとお米の甘味と旨味がなめらかに広がり、そこにフレッシュな酸が入って後口を軽く整えます。ビロードのような口当たりという表現が公式にありますが、実際にとろりとした質感があり、それでいて重く残らないバランスです。
合わせる料理として挙げられているのは、チーズタッカルビ、ガーリックシュリンプ、生春巻き、チヂミ。香辛料やハーブの効いた料理と組ませる想定です。さらにモンブランのような栗の菓子とも合うとされており、食事から甘いものまで通しで使える汎用性の高さがこの銘柄の持ち味です。
知っておくと便利なのは、迷ったらHACHIJIという選び方が成立することです。度数10%は低すぎず高すぎず、甘口とはいえ酸があるので料理を選びません。はじめてひねもすを買う人が1本だけ選ぶなら、ここが安全圏です。
KUJI(PM9:00)|シリーズ最高価格の純米大吟醸
KUJIは500mlで7,590円(税込)、アルコール度数15%の辛口で、純米大吟醸に当たります。12銘柄で最も高い1本です。
香りは南国のフルーツを連想させる華やかなタイプ。口当たりはキリッとしていて、磨き込まれた華麗な味わい、と公式は表現しています。夜9時、食卓のメインディッシュに差しかかる時間帯に置かれていることからわかるとおり、ステーキやクリームを使った濃厚な料理に合わせる設計です。
価格の理由を考えるうえで押さえておきたいのが精米歩合の考え方です。大吟醸は米を大きく削って造るため、同じ量の酒を造るのに必要な米が増え、原価が上がります。ひねもすは各銘柄の精米歩合を公式サイトで公表していませんが、純米大吟醸という表示自体が、法令上は精米歩合50%以下であることを示しています。
飲むときの注意点は、冷やしすぎないことです。10℃を下回るところまで冷やすと華やかな香りが閉じてしまいます。冷蔵庫から出して数分置き、香りが立ってきたところで飲み始めると、この価格に見合う香りの厚みが出てきます。
| 酒蔵・産地 | 森山酒造(神奈川県小田原市) |
| 銘柄 | KUJI(PM9:00) |
| 特定名称 | 純米大吟醸 |
| アルコール度数 | 15% |
| 内容量・価格 | 500ml/7,590円(税込・公式) |
| おすすめの飲み方 | 冷蔵庫から出して少し置き、香りが立ってから。ステーキやクリーム系の料理と |

夜10時から深夜1時まで|一日を閉じるための4銘柄

JUJI(PM10:00)|メープルシロップのようなデザート酒
食事が終わり、腰を落ち着ける時間帯に置かれているのがJUJIです。500mlで4,180円(税込)、アルコール度数15%の甘口で、デザート酒として設計されています。
味の芯にあるのはメープルシロップを思わせる凝縮した甘みです。なめらかな口当たりに濃い甘さ、そこへフレッシュな酸が入るため、貴腐ワインに近い構造になっています。ここまで甘さを濃くできる理由は造りにあり、仕込み水の一部に純米酒を使っています。水の代わりに酒で仕込むぶん、糖と旨味が薄まらずに残るという仕組みです。
合わせ方は食後の一杯が中心で、公式が挙げているのはフォアグラ、ビターチョコレート、バニラアイス、完熟メロン、ドライフルーツ、熟成チーズ。苦味のあるもの、脂のあるものと組ませると甘さが立体的になります。バニラアイスに少量かけて食べる、という使い方も成立します。
注意点は量です。度数15%で甘みも濃いため、食後にグラス一杯で満足できる設計になっています。500mlを数日かけて少しずつ、というペースがこの銘柄には合っています。
JUICHIJI(PM11:00)|メロンと和梨を思わせる純米大吟醸
JUICHIJIは500mlで5,390円(税込)、アルコール度数13%の辛口で、KUJIと並ぶ純米大吟醸です。
香りはメロンや和梨。軽やかな口当たりからジューシーな果実味がゆっくり広がり、後口はすっと引いていきます。KUJIが華やかさと切れで押すタイプだとすれば、JUICHIJIは果実味の柔らかさで包むタイプ。同じ純米大吟醸でも狙いがはっきり分かれています。
合わせる料理として公式が挙げるのは、生ハムメロン、ミニトマトのマリネ、イカの刺身、カマンベールチーズ。素材の鮮度が主役になる料理です。味の濃い料理に当てると果実味が負けるので、ここは指示どおりに軽い皿を選んだほうが持ち味が出ます。
知っておきたいのは、この銘柄が2026年7月に中身を変えていることです。アルコール度数を14%から13%へ下げ、ボトルの色も透明から青へ変更されています。手元の情報や古いレビューが14%と書いていても誤りではなく、リニューアル前の数値です。買う前に度数を確かめたいときは公式の商品ページを見るのが確実です。
REIJI(AM0:00)|紅麹を使わずに赤くなる日本酒
日付が変わる0時に置かれたREIJIは、500mlで3,190円(税込)、アルコール度数5%の甘口です。そして、透明感のある赤色をしています。
この赤の正体はお米由来のアントシアニンです。紅麹は使っていない、と公式が明記しています。色素を添加したのではなく、赤い色素を持つ米そのものから引き出した色なので、ロゼワインのような澄んだ赤になります。味わいは蜜のような甘さとフレッシュな酸味の組み合わせで、色の印象どおりに甘やかです。
見た目のインパクトが強いので、贈り物やホームパーティーで開けると場の空気が変わります。度数5%と低いので日本酒に慣れていない人でも入りやすく、氷を1〜2個入れてロックにしても味が壊れません。
ただし保存には気をつけてください。REIJIは瓶の中で酵母が生きているタイプなので、常温で長時間置くと開栓時に吹き出したり、瓶が破損したりするおそれがある、と公式が注意喚起しています。低アルコールだから常温で平気、という思い込みがいちばん危ないところです。
甘口でフルーティーな日本酒をもっと広く探したい方は、こちらの記事も参考になります。

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ICHIJI(AM1:00)|度数16%、燗にもできる濃い一杯
深夜1時のICHIJIは、500mlで3,630円(税込)、アルコール度数16%の辛口。12銘柄で最も度数が高い銘柄です。
香りはアーモンドやローストナッツ。シルキーな口当たりに凝縮した旨味が乗り、しっかりした酸が全体を締めて後口を切ります。夜が更けるほど味が深まる、というシリーズの設計をいちばん素直に体現しているのがこの銘柄です。
この銘柄が他と違うのは、温度帯を三通りに振れることです。冷やすと苦味と酸が旨味に溶け、常温にするとナッツの香りが立ち、燗にするとキレが増す——と公式が温度ごとの変化を示しています。ひねもすの多くが冷やして飲む前提の設計なので、燗まで楽しめるのは貴重です。40℃前後のぬる燗から試して、好みの温度を探すとよいでしょう。
合わせる料理はカレー、唐揚げ、魚の味噌漬け、豚の角煮、スモークナッツ。味の濃い、脂のある料理が並びます。豆知識として、燗にするときは湯煎で温めるのが基本です。電子レンジは液体の一部だけが先に熱くなり、香りが飛びやすくなります。
夜10時から深夜1時の4銘柄は、食事のあとに単体で味わう設計になっています。JUJIとREIJIは甘口、JUICHIJIとICHIJIは辛口ときれいに割れているので、「食後に甘いものが欲しいか」で先に半分に絞ると迷いません。
深夜2時から朝5時まで|夜明けに向かう4銘柄
NIJI(AM2:00)|洋梨と柑橘の淡麗スパークリング
NIJIは500mlで3,410円(税込)、アルコール度数13%の辛口で、淡麗なスパークリングです。
香りは洋梨や柑橘を感じる爽やかなタイプ。繊細な泡が軽やかな口当たりをつくり、クリアな後口で切れます。同じスパークリングでもROKUJIがハーブと酸で押すのに対し、NIJIは果実の香りをふわりと乗せてくる方向です。深夜2時という時間帯に泡の酒を置くのは意外に見えますが、濃い味が続いたあとに口の中をリセットする役割だと考えると腑に落ちます。
合わせる料理は鶏の竜田揚げ、ホタテのバター焼き、魚の香草パン粉焼き。香りのある魚介や、揚げ物の油を切りたい場面です。
この銘柄も中身が変わっています。2026年にアルコール度数を15%から13%へ下げ、スパークリングに刷新されました。以前のNIJIを飲んだ記憶がある方は、別物として飲み直したほうがよいでしょう。
SANJI(AM3:00)|杉樽で寝かせた燻製香の熟成酒
SANJIは500mlで3,960円(税込)、アルコール度数15%の辛口。12銘柄のなかで最も個性が強い1本です。
香りは燻製、穀物、そして杉の木。やわらかくなめらかな口当たりに厚みがあり、しっかりした酸でドライに切れていきます。この香りの正体は熟成方法にあり、SANJIは杉の樽で寝かせてから出荷されます。加えてワイン酵母をブレンドして複雑さを出しているため、日本酒というよりウイスキーの樽熟成に近い立ち位置の香りになります。
飲み方としては、口の広いグラスに少量注いで、香りが開くのを待つのが合っています。氷を入れると杉の香りが薄まってしまうので、まずはそのまま試してみてください。合わせるならスモークした肉や、皮ごと焼いた根菜のように、香ばしさのあるものが呼応します。
注意点は、日本酒らしいすっきりした味を期待して飲むと戸惑うことです。杉の香りは好みが割れます。12銘柄をひととおり試したあとの「次の1本」として選ぶと、この個性が楽しめます。
YOJI(AM4:00)|レモンのような微炭酸で夜を締める
YOJIは500mlで3,520円(税込)、アルコール度数9%の甘口で、微炭酸のタイプです。
レモンやライムのような爽やかさが前面に出て、やわらかな甘みと細かい泡が続き、柑橘らしい苦味を含んだ軽い後口で終わります。夜明け前の4時に置かれているとおり、濃い味の続いた深夜の口をリセットする役回りです。
面白いのは公式が挙げるペアリングで、チリコンカン、シシカバブ、サルサ、マリネと、スパイスと酸の効いた料理が並びます。レモンを搾りたくなる料理には合う、と覚えておくと選びやすいでしょう。ドレッシング代わりに料理へ少量かける、という使い方も紹介されています。
保存の注意はSHICHIJIやREIJIと同じです。度数9%の低アルコールで酵母が生きているため、常温保存は吹き出しや瓶の破損のおそれがあります。買った日から冷蔵庫に入れてください。
GOJI(AM5:00)|度数3%、甘酒のような夜明けの一杯
シリーズの最後、朝5時のGOJIは500mlで2,970円(税込)、アルコール度数3%の甘口です。甘酒風の日本酒という位置づけで、12銘柄で最も度数が低くなっています。
白くにごった液体からお米由来のやさしい甘みが広がり、それでいて後口はすっきり軽く切れます。夜が明けて白んでいく空をイメージした設計で、シリーズを一巡したあとに飲むと、ROKUJIの辛口スパークリングから始まった一日がきれいに閉じる感覚があります。
この銘柄も2026年7月1日に中身が更新されました。アルコール度数を2%から3%へ引き上げ、にごりを強めて甘酒らしさを高めています。古い情報では2%と書かれていることがあるので、度数を気にする方は現行の3%で確認してください。
注意点として、低アルコールだからといって常温に置くのは避けてください。GOJIは冷蔵保存が前提です。冷たいまま小さめのグラスに注ぎ、少しずつ飲むのが持ち味に合っています。
よくある失敗①:低アルコールの銘柄を常温で保管してしまう。SHICHIJI・REIJI・YOJI・GOJIといった度数の低い銘柄は瓶の中で酵母が生きています。公式サイトは、常温で長時間置くと開栓時に吹き出したり瓶が破損したりするおそれがある、と注意を促しています。「度数が低い=ジュースに近い=常温でよい」という思い込みが原因です。対策は単純で、届いた箱を開けたらその場で全本を冷蔵庫へ入れること。常温の宅配で届いた場合も、まず冷やしてから開栓してください。なお、20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。
12銘柄を数値で並べる|価格・度数・甘辛の早見表

公式公表値だけで組んだ12銘柄の一覧表
ここまで銘柄ごとに見てきた数値を、1枚の表にまとめます。価格・アルコール度数・甘辛はすべてHINEMOS公式サイトの各商品ページの公表値で、日本酒の教科書調べとして集計しました。味の主観評価は入れず、公表されている数値だけで組んでいます。
| 銘柄 | 時刻 | 度数 | 甘辛 | 500ml価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| ROKUJI | PM6:00 | 11% | 辛口 | 3,740円 |
| SHICHIJI | PM7:00 | 5% | 甘口 | 3,300円 |
| HACHIJI | PM8:00 | 10% | 甘口 | 2,970円 |
| KUJI | PM9:00 | 15% | 辛口 | 7,590円 |
| JUJI | PM10:00 | 15% | 甘口 | 4,180円 |
| JUICHIJI | PM11:00 | 13% | 辛口 | 5,390円 |
| REIJI | AM0:00 | 5% | 甘口 | 3,190円 |
| ICHIJI | AM1:00 | 16% | 辛口 | 3,630円 |
| NIJI | AM2:00 | 13% | 辛口 | 3,410円 |
| SANJI | AM3:00 | 15% | 辛口 | 3,960円 |
| YOJI | AM4:00 | 9% | 甘口 | 3,520円 |
| GOJI | AM5:00 | 3% | 甘口 | 2,970円 |
価格の開きは2.5倍以上、その差は造りの差
表を上から下まで眺めると、最も安いHACHIJIとGOJIが2,970円、最も高いKUJIが7,590円で、2.5倍以上の開きがあります。同じシリーズ、同じ500mlでこれだけ価格が動くシリーズはめずらしいでしょう。
この差はほぼ造りの差です。KUJIとJUICHIJIは純米大吟醸で、米を大きく削るぶん原価が上がります。JUJIは仕込み水の一部に純米酒を使うという手のかかる造りで4,180円、SANJIは杉樽での熟成という工程が加わって3,960円。一方でHACHIJIやGOJIは特別な工程を挟まないぶん価格が抑えられています。
選ぶときの目安として、3,190円のREIJIから3,630円のICHIJIまでが並ぶ帯——SHICHIJI・REIJI・NIJI・ICHIJIあたりが、ひねもすの標準的な価格帯だと考えるとよいでしょう。ここから上に行くほど、特定名称や熟成といった「手間の名前」が付いてきます。
注意したいのは、価格が高い銘柄ほど自分に合うとは限らないことです。KUJIは華やかな香りの純米大吟醸ですが、甘口を好む人にはJUJIやREIJIのほうが満足度は高くなります。価格は造りの手間を映していて、好みの一致度とは別の軸です。
実は、度数の幅こそがひねもす最大の特徴
意外と知られていないのですが、ひねもすでいちばん変わっているのは時刻の名前ではなくアルコール度数の振れ幅です。最も低いGOJIが3%、最も高いICHIJIが16%。その差は13ポイントあります。
一般的な日本酒は15度前後に収まるように加水調整され、原酒でも18度前後です。つまり多くの銘柄は15度〜18度という狭い帯のなかで勝負しています。ひねもすはその帯を下に大きく広げ、ビールより低い3%から始めているのです。
この設計が効いてくるのは、飲む人の顔ぶれがそろわない場面です。日本酒が得意な人にはICHIJIやSANJI、お酒に強くない人にはGOJIやSHICHIJIと、同じシリーズのなかで度数を選び分けられます。銘柄名がバラバラの酒を並べるより、見た目に統一感が出るのも利点でしょう。
もうひとつ知っておきたいのは、ひねもすが日本酒度や酸度といった数値を公式サイトで公表していないことです。甘辛は「甘口」「辛口」という表示で示されています。数値で味を推し量る習慣がある方には物足りないかもしれませんが、ラベルの数値に頼らず飲んで決める、という設計思想の表れでもあります。
日本酒度という指標そのものについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

「日本酒度+5」と書かれたラベルを手に取って、これは辛口なのか甘口なのか、なんとなく迷ったことはありませんか。数字の意味がつかめると、まだ飲んだことのない一本で…
甘口6・辛口6、最初の1本はここから選ぶ
表を甘辛で数えると、甘口がSHICHIJI・HACHIJI・JUJI・REIJI・YOJI・GOJIの6銘柄、辛口がROKUJI・KUJI・JUICHIJI・ICHIJI・NIJI・SANJIの6銘柄で、ちょうど半々に分かれます。偶然ではなく、どの時間帯にも甘辛が両方あるように配置されています。
そこで最初の1本は、飲む場面から逆算するのが早道です。食事と一緒に飲みたいならROKUJIかHACHIJI。乾杯から料理まで通せます。お酒に強くない人と飲むならSHICHIJIかGOJI。度数5%と3%で、味も甘口です。ひとりで静かに味わいたいならICHIJIかSANJI。深い時間帯の銘柄は単体で成立するように造られています。
贈り物なら見た目で選ぶ手もあります。赤い色のREIJIは開けた瞬間に驚きがあり、日本酒に馴染みのない相手にも渡しやすい1本です。
失敗しにくい進め方として、まず直営店で170mlのミニボトルを何本か試すか、公式オンラインストアの飲み比べセットで小容量を一気に確かめ、当たった銘柄だけ500mlで買い足す。この順番なら、合わない銘柄を500ml抱えることがありません。
ひねもすの日本酒はどこで買える?直営店と公式オンラインストア
直営店なら全銘柄を無料で試飲できる
いちばん確実なのは直営店に行くことです。公式サイトが案内している直営店では、全銘柄の無料試飲ができます。12種類の味を口で確かめてから買えるので、通販で当てずっぽうに選ぶより失敗が減ります。
現在の直営店は横浜、仙台、小田原の3か所です。いずれも駅や商業施設のなかにあり、買い物のついでに立ち寄れる立地になっています。以下に各店の情報をまとめました。
| 住所 | 〒231-0001 神奈川県横浜市中区新港1-1 横浜赤レンガ倉庫1号館1F |
| 電話番号 | 080-2892-9826 |
| 営業時間 | 10:00〜19:00(商業施設の営業時間に準じる) |
| アクセス | みなとみらい線「馬車道駅」または「日本大通り駅」より徒歩約6分 |
| 公式サイト | 公式サイト |
横浜赤レンガ倉庫店には、ここだけのラベル「REIJI for RED BRICK」(3,850円)があります。赤レンガ倉庫の意匠をまとった限定品で、横浜土産としても選ばれています。
| 住所 | 宮城県仙台市青葉区中央1-1-1 エスパル仙台Ⅱ |
| 営業時間 | 10:00〜21:00(日曜・祝日は20:30まで) |
| アクセス | JR仙台駅直結 エスパル仙台Ⅱ内 |
| 公式サイト | 公式サイト |
エスパル仙台店は2025年9月11日にオープンした東北初の直営店です。七夕をイメージしたラベルの仙台限定酒が置かれています。
| 住所 | 〒250-0011 神奈川県小田原市栄町1-1-9 ラスカ小田原 |
| アクセス | 小田原駅直結の駅ビル ラスカ小田原内 |
| 公式サイト | 公式サイト |
ラスカ小田原店は2026年6月25日、ラスカ小田原の増床エリアにオープンしました。森山酒造が蔵を構える小田原に、はじめてできた常設の直営店です。醸造地で買う、という体験ができるのはここだけになります。
注意点として、直営店の営業時間は入っている商業施設の営業時間に準じます。訪問前に施設側の営業日を確認しておくと確実です。
公式オンラインストアの飲み比べセットが使いやすい
近くに直営店がない場合は、公式オンラインストアが基本の入手経路になります。単品でも買えますが、はじめての方に向いているのは飲み比べセットです。
公式が用意しているセットは目的別に分かれています。12銘柄をすべて試す「TASTING SET for all the time/12銘柄飲み比べ」が11,000円。夕食の時間帯4銘柄をまとめた「TASTING SET for dinner time/4銘柄飲み比べ」が5,610円、深夜帯の「TASTING SET for midnight/4銘柄飲み比べ」が5,390円、夜明け帯の「TASTING SET for sunrise/4銘柄飲み比べ」が4,950円です。
自分で組み合わせを決めたいなら、好きな4銘柄を選べる「FIT TIME SET 4銘柄」が5,940円。500mlのフルボトルで全12銘柄をそろえる「HINEMOS全銘柄12本セット」は35,000円です。
選び方のコツは、まず時間帯セットのどれかを1つ買うことです。12銘柄セットは魅力的ですが、飲みきるまでに時間がかかります。開栓後は約1か月以内という推奨があるので、4銘柄セットのほうが実際には無駄が出ません。
直営店限定のFIT TIME SETという選択肢
直営店に行ける方に覚えておいてほしいのが、店舗限定の「FIT TIME SET」です。170mlのミニボトル4本を自由に組み合わせて、一律5,800円で買えます。
この容量が効いてきます。170mlはおおよそ一合弱にあたる量で、ひとりなら一晩、ふたりなら乾杯用に十分。500mlのフルボトルを4本買うと保存場所も飲みきる期間も負担になりますが、170mlなら開けたその日に飲みきれます。
組み合わせを決めるときは、試飲で好みを確かめてからにしましょう。全銘柄が試飲できるのが直営店の強みなので、その場で12種類を確かめ、気に入った4本をセットにする——この流れがいちばん納得のいく買い方です。
贈り物にする場合は、甘辛を混ぜて組むと相手を選びません。たとえば甘口からSHICHIJIとREIJI、辛口からROKUJIとICHIJIというように2本ずつ入れておけば、相手の好みが分からなくても外れが出にくくなります。
近くに直営店があるなら、まず試飲へ。全銘柄を口で確かめてから170ml×4本の「FIT TIME SET」(5,800円)を組むのが、遠回りに見えていちばん確実です。行けない場合は、公式オンラインストアの4銘柄セット(4,950円〜5,940円)から始めると飲みきりやすくなります。
買う前に知っておきたい3つの注意点
全銘柄が要冷蔵、これがひねもす最大の前提
ひねもすを買う前にいちばん押さえておくべきなのは、12銘柄すべてが冷蔵保存を前提にしていることです。公式サイトの各商品ページには、届いたら冷蔵庫で保管するようにという記載が並んでいます。
理由は造りにあります。低アルコールの銘柄は瓶の中で酵母が生きており、温度が上がると発酵が進んで炭酸が増えます。度数の高い銘柄も、光と温度で香りと味が落ちていきます。一般的な日本酒でいえば生酒に近い扱いだと考えるとイメージしやすいでしょう。
実際の対処は簡単です。500mlという容量は冷蔵庫のドアポケットに立てて入る高さなので、常備しても場所を取りません。まとめ買いした場合は、冷蔵庫に入りきらないぶんを直射日光の当たらない涼しい場所に置き、飲む予定の本を優先して冷やしていきます。
注意点として、夏場の常温配送で受け取ったときは、すぐに冷蔵庫へ入れてから開栓してください。届いた瓶が温まっている状態で栓を開けると、泡のある銘柄は吹き出すことがあります。
日本酒の保存温度そのものについては、こちらの記事で種類別に整理しています。

「買った日本酒、冷蔵庫に入りきらないけど常温で置いておいて大丈夫?」——これは日本酒を家で楽しみ始めた人がまず迷うポイントです。ワインのように棚に並べていいのか…
開栓後は約1か月、受け取りから1年が公式の目安
飲みきる期間の目安も公式サイトが示しています。開栓後は約1か月以内、未開栓でも受け取りから1年以内が推奨です。
日本酒に賞味期限の表示義務はありませんが、これは「いつまでも同じ味が続く」という意味ではありません。とくにひねもすのように香りを立たせた設計の酒は、時間とともに香りが落ちていきます。1か月・1年という数字は、造り手が意図した味が保てる範囲の目安と考えるのが妥当です。
実践的なコツは、開栓したら瓶を立てて冷蔵庫に入れることです。横に寝かせると空気に触れる液面が広くなり、酸化が早まります。泡のある銘柄は、栓をしっかり閉めて数日以内に飲みきるつもりで計画を立てるとよいでしょう。
豆知識として、500mlは一合(180ml)でおよそ2.8杯分です。ふたりで飲めば一晩で空きます。この「飲みきれる量」の設計があるからこそ、1か月という推奨期間が現実的な数字として機能します。
よくある失敗②:相手の好みを確かめずに贈って外す
もうひとつ多いのが、贈り物での失敗です。ひねもすはボトルのデザインが目を引くのでギフトに選ばれやすいのですが、「日本酒好きの人に贈ったら喜ばれなかった」という取り違えが起こります。
原因ははっきりしています。日本酒を長く飲んできた人ほど、辛口ですっきりした食中酒や、香りの高い吟醸を「日本酒らしい味」の基準に置いています。そこへ度数3%の甘酒風のGOJIや、赤い色のREIJIを贈ると、期待していた方向と違うものが届くことになります。逆に、日本酒に馴染みのない相手には同じ2本が喜ばれます。
対策は2つです。ひとつは、相手が日本酒に親しんでいるなら純米大吟醸のKUJIやJUICHIJI、燗にもできるICHIJIといった、従来の日本酒の文脈に乗る銘柄を選ぶこと。もうひとつは、甘辛を混ぜた飲み比べセットにして、選ぶ余地を相手に渡すことです。
もうひとつ添えておきたいのは、相手の冷蔵庫事情です。全銘柄が要冷蔵なので、贈るときは「冷蔵庫で保管してください」とひとこと伝えておくと、受け取った側が常温で置いてしまう事故を防げます。
「まずい」という感想が出るのはなぜか
ひねもすを検索すると「まずい」という語が候補に並ぶことがあります。これは味の良し悪しというより、期待と設計のずれから生まれる感想です。
ひねもすは特定名称ではなく時間で分類し、甘口を6銘柄そろえ、度数を3%まで下げ、赤い酒や杉樽で熟成した酒を並べています。これは「従来の日本酒を上手に造る」方向ではなく、「日本酒という枠を広げる」方向の設計です。従来の物差しを当てれば、当然ずれが出ます。
逆に、日本酒をあまり飲んでこなかった人にとっては、この設計がそのまま入口になります。SHICHIJIやGOJIから入り、HACHIJIやNIJIを経て、ICHIJIやSANJIまで進む——シリーズの中に階段が用意されているのです。
まとめ|ひねもすは「何時に飲むか」から選ぶ日本酒
ひねもす(HINEMOS)は、神奈川県小田原市の森山酒造が冷蔵倉庫の中で醸す、12銘柄のシリーズです。夜6時のROKUJIから朝5時のGOJIまで、時刻がそのまま銘柄名になっていて、夜が更けるにつれて味が濃くなり、夜明けに向かってまた軽くなっていきます。価格は2,970円から7,590円、アルコール度数は3%から16%。日本酒度も精米歩合も表に出さず、「いつ飲むか」だけで選ばせる設計です。最初の一歩としておすすめしたいのは、時間帯で分けた4銘柄の飲み比べセット(4,950円〜5,610円)を1つ買い、今夜の時刻に合う1本を開けてみることです。時計を見てから栓を開ける、という新しい習慣がそこから始まります。
※価格・アルコール度数・営業時間は変更されることがあります。最新情報はHINEMOS公式サイトでご確認ください。なお、20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。

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